ぐるなが人物MAP②

町の中の古書店から
明るい話題を発信する。

山崎晴樹さん

山崎書店店主 山崎晴樹さん町の中には、会っただけで心和む人がいる。お互いの顔を眺めながら、どうということのない他愛ない話をして笑いあう。それだけのことなのに、ちょっと幸せになれたような気分。このせちがらい世の中、そういう人は少なくなった。貴重な存在だ。

長野市緑町の古書店・山崎書店の主人山崎晴樹さんもそんな一人。眼鏡をかけた目はいつも笑っていて、短めの髪型は、流行のアンシンメトリーなんだか、寝癖なんだかわからないナチュラルな雰囲気。興が乗れば「ガハハハ」と往年の和田勉ばりに声高らかに笑う。こちらが振った世間話にもいい具合に反応する。そんなところが愛されて、この古書店には「ヤマちゃん」と呼び、いろいろな人たちが集まってくる。

最近は、童心芸術家とも呼ばれる横井弘三の作品を発掘調査する市民団体「横井弘三とオモチャン会」(黒田弘志会長)の事務局を務める。飯田市出身の横井は昭和19年に長野市に疎開、善光寺界隈で精力的に創作活動を行い、市内にも数多くの作品を残している。この絵に惚れ込んだ人たちが集まり、会結成に至ったのも山崎さんの人脈が貢献しているようにも思える。

山崎書店外観ところで、山崎書店は「昭和23年、最初は若松町でオヤジの松十が始めたんです」。終戦直後の開業は長野市内でも老舗格だ。言論弾圧や統制などが続き、活字に飢えていた当時の人たちにとっては、まさに待ちに待った本という「娯楽」を提供してくれる貴重な場所となった。

現主人の晴樹さんは2代目だが、東京の大学在学中から、池袋の有名古書店「高野書店」で修業。本の価値観、売れる本の見極め方などを徹底的にたたきこまれた。それが今日に生きている。長野に戻ったのは緑町店がオープンした平成元年。

入口に高く積まれた雑誌、安くて値打ちのある郷土の本、そして読みたかったあの文庫本…。本好きにはたまらない誘惑が、もう店の外から始まっている。

山崎書店店内「蔵書は、倉庫にあるものを合わせれば5万冊は超える。だから店の中には本がいっぱいで、よく、もっと見やすく整理しろと言われるんだけど、古本屋の楽しみは、こんな本の山の中から自分が探し続けていた1冊を見つけることだと思うんだよね。ガハッハハ」山崎さんは笑う。

「長野は全国的に見ても地方出版社が多いし、いわゆる郷土ものの出版も目立つ。郷土史が好きな人が多いのも特徴かな。古書店は店主の好みが仕入れに出るけど、その点を抑えておかないとなかなか売れないね。私も全国古書籍商組合連合会に加入していて、東京で曜日ごとに開かれる中央市会、東京古典会、明治古書会、東京資料会などで仕入れるわけ。店主のセンスが試されるから、そりゃもう、大変だよ、ガハハハ」。

山崎さんによれば、最近20代くらいの人たちが「もう一度、名作を読んでみたくなった」と古書店を訪れる姿が目に付くとか。震災や不況で、余暇の過ごし方も少しだけ変わり始めているのかもしれない。

山崎書店/長野市緑町1398
営業時間/10時~19時 日曜定休