●山のジャム屋
北アルプスを一望する指定席。
おいしいジャムが人の心をつなぐ。

山のジャム屋長野市信更町涌池の高台に山小屋風の佇まいを見せる「山のジャム屋」。

小ぢんまりとした構えだが、ここは是利(これとし)靖雄さん、美穂さん夫妻が開いたジャム加工所とそこで作られたジャムを味わえるカフェだ。

目の前には、蓮華岳、爺ヶ岳、鹿島槍、五竜岳など北アルプスの峰々が連なっていて、その稜線の美しさに息を飲む。

住み慣れた東京を離れ、二人がここに引っ越してきたのは2005年4月。ちょうど、30数年に及ぶサラリーマン生活を終えた後だった。父親の仕事の関係で幼少期から日本各地を転々とした経験を持つ是利さんは、二人の老後は「のどかな山間の里で、おいしいものを作りながら暮らそう」と考えていた。

別荘・土地情報誌を読みあさったり、候補地を実際にその目で確かめるべく長野、山梨などの各地に出かけたり、リサーチに明け暮れた日々。

涌池にも何度もやって来た。「来るたびに、決まって晴れていて、北アルプスの山並みが私たちの眼前に迫ってくるんです。まるで、早く、ここへいらっしゃい!というようにね」と振り返る靖雄さん。そこで、決断がついた。

雑木林だった土地を切り開き家を建て、カフェを作った。石がゴロゴロする最悪の環境だったが、描いた夢を実現するために懸命に作業を進め、約2600平方メートルの土地を耕した。

山のジャム屋もともと、二人ともおいしいものには目がなかった。特に、美穂さんはジャム作りもケーキ作りも趣味で「いつか、自分たちの作るケーキやジャムを味わってくれる人たちが集まるお店が開けたら…」と秘かに考えていた。最初は夢物語だったその計画が現実のものになったのは、二人が作った試作のジャムに多くの友人たちが「おいしい!」と言って注文をくれたこと。

2010年にジャム加工所を作り、翌年2月カフェをオープンした。二人が作るジャムはブルーベリー、洋梨、プルーン、あんず、りんごの5種類(250g800円)。完熟フルーツに砂糖だけを混ぜ、添加物を使わないのがポリシー。それだけに砂糖に対するこだわりは特別で、ミネラル豊富な種子島産の「洗双糖」を取り寄せて使用する。甘すぎない上品な味わいはそこに秘密がある。

ブルーベリーは信濃町の農園の仲間が作ってくれるが、近くの畑で自分たちも栽培している。プルーンは中野市と常念岳山麓安曇野市で、低農薬で育てたもので、鉄分豊富な皮も一緒に煮込む。

洋なしだけは、安曇野産のシルバーベルという大型品種にグラニュー糖とわずかのレモン(国産)、信州産の寒天を加えて作る。共に、果実本来のみずみずしさが生かされ、丁寧に作られたものだけが持つまろやかさを感じさせる。「夫婦二人で作るジャムは250g瓶で年間3000~5000個が限度ですが、おかげさまで、毎年ほぼ完売の状態です」という。

山のジャム屋ジャムを味わえるカフェは、金・土・日のみの営業だが、数日かけて仕込むというビーフカレー(サラダ付950円)やスゥイートバジルの葉を使ったバジルシフォンケーキ(350円)が極上のおいしさ。涼風吹き抜けるテラスに出て、北アルプスを眺めながらいただくと、その味わいもグッと増す。

「ここに住んでうれしいことは、果実やジャム作りを通じて多くの信州人と交流できたこと。ブルーベリーを作ってくれる仲間、豊野町からおいしいコーヒーを届けてくれる友人、店の行く末を見守ってくれる地元の人たち、そして山のジャム屋を愛してくれる常連さん…。みんなの心が結ばれているんです」と是利さん。

「人のつながりがあったからこそ、ここまで来れた。これからは、自分たちが人と人をつなぐ場所を作っていきたい」。間もなく、高台の山のジャム屋に透明の風が吹く季節が訪れようとしている。山のジャム屋

山のジャム屋
◆所在地 長野県長野市信更町涌池3023-6
◆カフェ営業時間 11:00~16:00(金・土・日のみ ジャムは毎日受付け)
◆問い合わせ ☎026-290-3037

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